沖縄タイムス論壇

 今日(2019年10月11日)の沖縄タイムスに、やんばるDONぐり~ず顧問の平良さんの論壇が掲載されましたので、下記のとおりご紹介します。


【論壇 『やんばるの自然保護 特別区域の皆伐止めて』】

 昔、やんばるの共同売店や地元の人々に、ヤンバルクイナを見たことがあるか聞いて回ったことがある。見たことがないがほとんどだった。1993年、県自然保護課が発行した「特殊蝶類生息環境調査Ⅵ」によると、北部集落周辺はヤンバルクイナが確認されておらず、当時、特殊鳥類の生息域は山奥であったことが分かる。現在は、ある集落周辺は希少種事故多発地域の周囲版が立つなど変化している。

 自然遺産登録に向け環境省の国立公園区分では、完全保護下にある特別保護地区は、やんばる全体のわずか数%。その他は保護地域を1種、2種、3種に分け、1種地域以外は、届け出れば開発に盛元がない仕組みのようだ。

 私自身、意識的に3種地域を散策する。辺戸岬近くで海岸線の谷間にもヤンバルクイナ、ノグチゲラなど特殊希少種を多く確認した。2種、3種地域の方が希少種が多いのではないかと思うようになった。

 9月15日、辺土の安須森が遠望できる3ヘクタールほどの大伐採(皆伐)に出くわした。希少生物の生命線である谷筋が無残に伐採され、重機のキャタピラでずたずたに破壊されていた。やんばるの森で多様性が保持できているのは、谷筋(沢筋)豊かさである。ここの沢筋は樹齢が古く、原生的森林景観で、これこそが世界遺産になるべき区域であろうかと思わせる。宇嘉で2ヘクタール、宜名真で2ヘクタールが伐採される予定だという。

 毎年、伐採を目の当たりにするが、環境調査と配慮がされているとは環境調査と配慮がされているとは思えない。伐採された2種、3種特別保護区域の沢筋の森林は素晴らしく、多様性を育む大木等が生い茂っていた。

 91年1月、林野庁は「森林の裸地化と、それを回避するための伐採を推進することとし…、尾根、斜面中腹、渓流沿いなどおおむね50メートルの規模で保護樹帯を設けるようにすること」と丁寧な取り扱いを求めている。環境省や県森林管理課、国頭村は、皆伐に対して、どのような調査と配慮をしてきたのであろうか。

 10月には国際自然保護連合(IUCN)が調査予定という。旨を張って伐採現場を案内、説明できるだろうか。環境省は国立公園区域を策定したが、世界自然遺産特別保護地区指定の担保にならず、現状は放置された感がある。自然を根こそぎ破壊する大皆伐を止める方策はないのか。

(那覇市、第3次・命の森やんばる訴訟原告団長、68歳)


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