沖縄タイムス論壇「やんばるの森 皆伐疑問 県の理念 整合性問われる」

やんばるDONぐり~ずの顧問であり、第3次・命の森やんばる訴訟原告団長の平良さんの論壇が2019年4月14日の沖縄タイムスに掲載されましたので、紹介します。


やんばるの森 皆伐疑問 県の理念 整合性問われる

 春の本島北部山地、やんばるの森は生き物の息吹が感じられ、まさに山踊る季節だ。生き物たちの鳴き声を聞き、シイの木々の新緑の彩りを体感しながら、脊梁山地を縦断する大国林道を北上した。

それにしても、この林道を基幹として林道がクモの巣のように、集落の方へ縦横に走っている。閉ざされた奥深い森林が人の手によって開かれ、幻の鳥と呼ばれたヤンバルクナも、ガラス越しに見ることができるようになった。

さらに林道を進み、約35㌔の終わりごろ、そよ風の中で辺戸岬を遠望できる見晴らしから赤い山肌が現れた。新緑の山間から地が流れ出ているような光景だ。さらに北上し、伊地林道から国道58号線に出る途中も赤い山肌が見えた。

さらに58号線から小さな謝敷林道を登ると、大皆伐が現れた。一木一草残さず、山を丸裸にする大伐採だ。すぐ真下は県道2号が横断している。周辺は森林伐採が至る所で見られ、なるほど、生き物たちが山を追われ、直下の2号線では希少種のヤンバルクイナやトゲネズミの輪禍が多発しているのもうなづける。伐採地は国立公園の区分によると国立公園第2種か3種特別保護地域と思われる。

公立公園化されても、このような伐採行為が行われるからくりになっているのであろうか。皆伐地では、ある種の植林が行われ、画一化された森が進行しているようだ。シイの木を中心とした多様な森が失われているし、生物多様性の消失が進行しているように思える。この事業は林業で、国の補助金で成り立っているという。北部山地の貴重な自然の消失とひそかに、じわじわと進行している。

島国、琉球の昔々から生活用材の確保は困難であったが、現代のような状況とは全く異なっている。

世界が価値を認める、この狭い狭い特殊な山々に莫大な補助金を投下する林業とは何なのだろうか。いまだに王国時代の幻想を抱いている人たちが存在しているのだろうか。

 2019年度2月県議会では県の主な取り組みとして「自立」「共生」「多様性」の理念が示され、そこには沖縄の自然環境を守るとして「世界自然遺産登録に向けた取り組み」「希少種の保護や外来種対策などの自然環境の保全」なども玉城デニー知事から趣旨説明がなされている。現実との整合性が問われる。

(那覇市、第3次・命の森やんばる訴訟原告団長、68歳)