やんばるDONぐり~ずの活動紹介
やんばるDONぐり~ずがいつもお世話になっている市川利美さんが代表を務めているナキウサギふぁんくらぶが発行している「ナキウサギつうしん No.84」にやんばるDONぐり~ずの記事を掲載していただきましたので、紹介します。
1 やんばるでの補助金目的の「林業」の実態
沖縄本島北部に位置するやんばるの森は、希少種、固有種の宝庫です。2016年、環境省はやんばる地域を国立公園に指定しましたが、厳格に伐採が禁止される区域はやんばる全体の3%しかありません。私たちは2017年にIUCNに英文で、やんばる地域全体を遺産の保護区域とし、森林伐採は中止して、やんばるの保護のためのあらゆる方策を採るべきだという趣旨の意見書を提出していました。2018年、IUCNはやんばる地域などの世界自然遺産登録について「登録延期」を勧告し、環境省は一旦申請を取り下げ、再申請せざるを得ませんでした。
やんばるの国頭村の森では、毎年約10ヘクタールの規模で山を丸裸にする皆伐の方法による森林伐採が実施されています。「林業」と称していますが、伐採した樹木のほとんどはチップ等の単価の低い用材にしかならず、採算性が取れません。皆伐で「荒れた森林」を人為的に作り、「森林環境保全整備事業」と称して植林をし、この事業に対して国や県から国頭村森林組合に対し補助金が支払われます。植林、保育、林道の整備などに、何年にもわたって多額の補助金が注ぎ込まれています。
2 命の森やんばる訴訟
2007年に沖縄県民が原告となって沖縄県に対し林道開設事業の公金支出差止めを求めた「第2次命の森やんばる訴訟」では、林道工事のみならず森林環境保全整備事業そのものが争点なり、その中でも費用対効果の算出方法に問題があることが判明しました。原告の議会活動もあって、このことが沖縄県議会でも大問題になりました。原告と弁護団はシンポジウムの開催や新聞への投稿等をし、県民世論の高まりもあって林道建設工事は全て休止(事実上の中止)に追い込まれました。県有林の森林伐採も中止になりました。判決では、正当な理由がなくては工事を進めてはならないということが示され、現在でも林道建設工事と県有林の森林伐採は止まっています(判決の報告はHPをご参照ください。)
また、第2次命の森やんばる訴訟、それに先立つ第1次訴訟、そして粘り強い運動の成果で、森林伐採の規模も大幅に縮小されてきました。県営林での伐採は長期間に渡って行われていません。
それでも国頭村有林での森林伐採は毎年続いているため、2017年には私たちのメンバーも原告・代理人となって、沖縄県を相手に違法な森林伐採に私たちの税金を使わないように求める「第3次命の森やんばる訴訟」(違法公金支出金返還等請求事件)を提起し、現在も進行中です。
3 設立の経緯とこれまでの活動と訴訟
私たちは毎年繰り返されている森林伐採を多くの人に知ってもらい、森林伐採を止めたいとの思いから、2012年4月に、やんばるの森をこれまで見守ってきた「命の森やんばる訴訟」の原告と、その弁護団の弁護士を中心に立ち上げた自然保護団体です。
やんばるの森の中でどっしりと板根をひろげ、ヤンバルテナガコガネやケナガネズミなど様々な生き物たちの生活や繁殖を支えているオキナワウラジロガシのドングリは日本最大です。私たちはこの素晴らしいやんばるの自然を未来に残したいという思いから「やんばるDONぐり~ず」という名称に決めました。
私たちは設立以来、国頭村・沖縄県・国に対し公文書開示請求を行い、伐採等に関する資料を取得して伐採地等の現場調査をし、伐採に対する抗議声明を発表してきました。また、写真展、バスツアー、自然観察会、シンポジウム等の活動も行ってきました。
私たちのメンバーのほとんどは、伐採地調査や自然調査は素人同然のため、生態学の専門家の金井塚務さん、市川守弘弁護士や市川利美さん、県外の植物の専門家などに協力してもらっています。
4 命の森やんばるを守るために
現在、私たちは伐採地に隣接する森や、自然が色濃く残る森の中に自動カメラを設置して、どのような生き物が生息しているのかを調査しています。伐採地に隣接し、世界自然遺産登録候補区域から外れているこの森でも、これまでにヤンバルクイナの交尾している様子や、ノグチゲラ、ホントウアカヒゲ、リュウキュウイノシシがエサを探している様子など、貴重な映像が記録されています。生き物の棲家に人間が引いた境界線などありません。沖縄県や国頭村は、生き物の棲家を奪う森林伐採を止めて自然を生かした地域づくりに方針を転換すべきです。
私たちはこれからも県内外の市民の方々や自然保護団体と意見交換し、協力し合い、模索しながらやんばるの保全活動をすすめていきたいと考えています。
0コメント